【新刊】横山社長の本が発売になりました

Amazon POD(オンデマンド出版)にて、発売になりました。こちらからご覧下さい。

目 次
はじめに  
第一章 日本の女性がトロイの木馬になる
  男性と互角に戦ったギリシャ神話の女性 
  考古学でアマゾネス神話は事実と判明 
  贈物の木馬がトロイアの場内に入った 
  女性の天性のやさしさが世界政治に必要 
第二章 生と死が限りなく近い中東で考えた  
  スパナで殴られて 
  投石でフロントガラスが砕けた 
  カイバル峠から中東へ 
  準備不足で失敗の連続 
  再び動乱のテヘランへ 
  神の国へ 
  イラクのメソポタミア文明の野望 
  解放機構(PLO)の暗躍 
  地球規模の覇権を争う時代 
第三章 戦争は嫌いだ!と山口淑子(李香蘭)  
  歌姫との出会い 
  野蛮な戦争の阻止に生涯を捧げる 
  オペラのように歌われる「夜来香」 
第四章 新型ミサイルの軍縮交渉を提案しよう  
  ワシントンで疑問を探る 
  毒をもって毒を制する毒ガスの軍縮 
  人類への究極の犯罪者たち 
  新スターウオーズ禁止条約(SDI)を提案しよう 
  落としどころは日本主導のTPP(環太平洋パートナーシップ協定) 
第五章 世界一の観光地 最上川上流部が動き出す  
  イザベラ・バードが見出したエデンの園 アルカディア回廊 
  最上川上流部のエデンの園 アルカディア回廊 
  アルカディア回廊は滞在型リゾート 
  縄文人住宅のレンタルはいかが 
おわりに 女性の部隊を創るとき  

はじめに
来年4月には小学生になる孫娘から、わたくしの誕生日祝いの電話がかかってきた。2021年9月11日のことだ。
「お誕生日、おめでとうございます」というお祝いの言葉に続けて、「白じい、いくつになったの?」とたたみかけてきた。一緒に電話をかけている父親から尋ねるようにいわれたらしい。
わたくしは一瞬、ドギマギした。正直なところ年齢について正確には数えていなかったからである。
「エーッと、2021年から生まれた年の1942年を引くと・・・」。
頭の中で暗算すると、なんと79ではないか。数えでは80ということか!
人生の未知の領域に入ったことを孫娘に教えられて、電話を切ってから、しばし宙をにらんだ。
それから数日して、速達が届いた。電話の直後に孫娘が描いた白じいの肖像画がよく出来ているので誕生日のプレゼントですという。実際に見もしないで、記憶だけで描いたにしては親もビックリの出来なので記念に送ったのだとか。
裏表紙にあしらったポートレートのことだが、それだけのことはある。
白じいのわたくしの雰囲気を見事につかんでいる。感動ものだ。
ちなみに孫娘の父方のおじいさんであるわたくしは物書きで、家に閉じこもっていることが多いために顔色が白いから「白じい」。母方のおじいさんは歳がやや若いこともあり、毎日、テニスをして真っ黒に陽に焼けているから「黒じい」なのである。
孫娘は、描きたいことを自在に書き、描ける才能に恵まれているらしい。うれしいことだ。
成長したらどんな娘に育って輝くのだろうかと、孫娘の将来に思いをはせたとたん、頭の中に黒雲が現れてむくむく膨れ上がってきた。かつて国際事件記者として目撃した消すに消せないまがまがしい記憶が次々と蘇ってくる。
この本は孫娘との極めてプライベートなやりとりがきっかけになった。
しかし孫娘が示唆したテーマはとても大きい。折からの国際情勢の激変のために、男社会が当たり前だったこれまでの社会システムを、女性中心に転換しなければ地球が壊れてしまうように思われる。これからの人類のありようにかかわるものをはらんでいる。
宗教勢力が権力を取り戻したアフガニスタンからは、前政権で働いていた女性に石打ちの刑が行われたというニュースが流れている。女性の教育の継続を求めるデモが鎮圧され、一方で目だけ黒い伝統衣装を着た女性たちが護衛付きで新政権の誕生を祝って市内を練り歩いているという。
中国では習近平主席が辛亥革命(しんがいかくめい)の110周年記念式典(10月9日)で「台湾問題は純粋な内政問題だ。統一という歴史的任務は必ず実現する」と宣言した。これを台湾の女性総統は「台湾人民は圧力に屈することはない」とはねつけ、道路で戦闘機の発着訓練を行う臨戦態勢を強化した。空母を一撃で爆沈できるという特殊な戦艦も進水させた。
万が一、中台間で戦端が開かれ、ミサイルが発射されたら、その瞬間、海底の潜水艦から報復のミサイルが雨あられと飛ぶシステムになっているという。
戦火がどこまで広がるか。だれにも分からない。アジア太平洋地域に第二次世界大戦以降、最も深刻な国際緊張が張り詰めてきた。
ロシアと中国が日本海で合同軍事演習をおこなうという不気味な動きもある。演習に参加したロシアのミサイル駆逐艦など5隻、中国の駆逐艦5隻の計10隻は、なんと津軽海峡をそろって航行して太平洋に抜けた。
初めてのあからさまな威嚇行動である。背筋を寒くしている日本人は少なくないだろう。
口先だけの応酬に止まって、空恐ろしい出来事が現実のものにならないようにするにはどうすればいいのか。孫娘の未来のために必死で思索していたら、主義や宗教を超える人間のもっとも根源的な資質、性の違いに思い当たった。
男は権力志向が強くて、とかく争う傾向が強い。それが過ぎて、いまや全面的な核戦争の可能性さえも語られるようになり、それぞれの陣営が軍拡に血眼になっている。これでは地球そのものがもたない。
人類が生き延びるためには、もはや男社会から権力を奪って、女性に政治をお願いするほかはないのではないか。
女性には子育てをするために天性の優しさが備わっている。女社会にして権力を女性に委ねれば、もっと穏やかな、持続可能な世の中になるだろう。それを期待しての奇策である。
こうした試みはギリシャの神話の時代に行われたことがある。王国のあらゆる権力を女性だけが握るアマゾネスの政治である。
ギリシャ神話の女性だけの専制政治を、そのまままねるということではない。現代は民主主義の時代だからそれはできない。しかしできるだけ多くの女性議員を国会に送って、首相を女性から選び、閣僚の半分以上を女性にお願いすることはできるだろう。それだけでその国の政治は、優しくなり、外交路線も穏やかになるはずだ。
当面の障害は、外国ではなく国内の男社会かもしれない。これまで権力をほしいままにしてきた権力の亡者の男どもは必死に抵抗するだろう。けれども、もはや彼らにまかせておくことはできない。極東の国際緊張をここまで悪化させた責任を取り、反省してできるだけ遠慮していただかねばなるまい。
笑わば笑え。しかしつい先日の自民党総裁選挙では、首相になったら閣僚の半分を女性にすると表明して立候補した女性議員がいた。すばらしい。あと一歩だ。
グローバルに見渡してみてもアマゾネス政治は日本で最も早く実現するようにみえる。日本の女性はいまこそ立ち上がっていただきたい。
日本のためだけというそんな小さなことではない。いまや世界中の、人類の命運がかかっていると思う。
この本を裏表紙の肖像画を描いてわたくしの誕生日を祝ってくれた孫娘に捧げる。
思うことを自由に書いて、描ける未来が続くことを願って。
                  横山三四郎