間もなく出版『アマゾネス政治』

地球を壊す男社会から転換のとき              著 横山三四郎

弊社横山社長の新刊、間もなく出版です。
一部をご紹介いたします。

はじめに

 来年4月には小学生になる孫娘から、わたくしの誕生日祝いの電話がかかってきた。2021年9月11日のことだ。

「お誕生日、おめでとうございます」というお祝いの言葉に続けて、「白じい、いくつになったの?」とたたみかけてきた。一緒に電話をかけている父親から尋ねるようにいわれたらしい。

わたくしは一瞬、ドギマギした。正直なところ年齢にっいて正確には数えていなかったからである。

「エーッと、2021年から生まれた年の1942年を引くと・・・」。

頭の中で暗算すると、なんと79ではないか。数えでは80ということか!

人生の未知の領域に入ったことを孫娘に教えられて、電話を切ってから、しばし宙をにらんだ。

それから数日して、速達が届いた。電話の直後に孫娘が描いた白じいの肖像画がよく出来ているので誕生日のプレゼントですという。実際に見もしないで、記憶だけで描いたにしては親もビックリの出来なので記念に送ったのだとか。

表紙にあしらったポートレートのことだが、それだけのことはある。白じいのわたくしの雰囲気を見事につかんでいる。感動ものだ。

ちなみに孫娘の父方のおじいさんであるわたくしは物書きで、家に閉じこもっていることが多いために顔色が白いから「白じい」。母方のおじいさんは歳がやや若いこともあり、毎日、テニスをして真っ黒に陽に焼けているから「黒じい」なのである。

孫娘は、描きたいことを自在に書き、描ける才能に恵まれているらしい。うれしいことだ。

成長したらどんな娘に育って輝くのだろうか。と、孫娘の将来に思いをはせたとたん、頭の中に黒雲が現れてむくむく膨れ上がってきた。かつて国際事件記者として目撃した消すに消せないまがまがしい記憶が次々と蘇ってくる。

この本は孫娘との極めてプライベーまでトなやりとりがきっかけになった。

しかし孫娘が示唆したテーマはとても大きい。折からの国際情勢の激変のために、男社会が当たり前だったこれまでの社会システムを、女性中心に転換しなければ地球が壊れてしまうように思われえる。これからの人類のありようにかかわるものをはらんでいる。

宗教勢力が権力を取り戻したアフガニスタンからは、前政権で働いていた女性に石打ちの刑が行われたというニュースが流れている。女性の教育の継続を求めるデモが鎮圧され、一方で目だけ黒い伝統衣装を着た女性たちが護衛付きで新政権の誕生を祝って市内を練り歩いているという。

中国では習近平主席が辛亥革命(しんがいかくめい)の110周年記念式典(⒑月9日)で「台湾問題は純粋な内政問題だ。統一という歴史的任務は必ず実現する」と宣言した。これを台湾の女性総統は「台湾人民は圧力に屈することはない」とはねつけ、道路で戦闘機の発着訓練を行う臨戦態勢を強化した。空母を一撃で爆沈させられるという特殊な戦艦も進水させた。

万が一、中台間で戦端が開かれ、ミサイルが発射されたら、その瞬間、海底の潜水艦から報復のミサイルが雨あられと飛ぶシステムになっているという。戦火がどこまで広がるか。だれにも分からない。

アジア太平洋地域に第二次世界大戦以降、最も深刻な国際緊張がつめてきた。

ロシアと中国が日本海で合同軍事演習をおこなうという不気味な動きもある。演習に参加したロシアのミサイル駆逐艦など5隻、中国の駆逐艦5隻の計⒑隻は、なんと津軽海峡をそろって航行して太平洋に抜けた。初めてのあからさまな威嚇行動である。背筋を寒くしている日本人は少なくないだろう。

口先だけの応酬に止まって、空恐ろしい出来事が現実のものにならないようにするにはどうすればいいのか。孫娘の未来のために必死で思索していたら、主義や宗教を超える人間のもっとも根源的な資質、性の違いに思い当たった。

男は権力志向が強くて、とかく争う傾向が強い。それが過ぎて、いまや全面的な核戦争の可能性さえも語られるようになり、それぞれの陣営が軍拡に血眼になっている。これでは地球そのものがもたないだろう。

人類が生き延びるためには、もはや男社会から権力を奪って、女性に政治をお願いするほかはないのではないか。

女性には子育てをするために天性の優しさが備わっている。女社会にして権力を女性に移せば、もっと穏やかな、持続可能な世の中になるだろう。それを期待しての奇策である。

こうした試みはギリシャの神話の時代に行われたことがある。王国のあらゆる権力を女性だけが握るアマゾネスの政治である。

ギリシャ神話の女性だけの専制政治を、そのまままねるということではない・現代は民主主義の時代だからそれはできない。しかしできるだけ多くの女性議員を国会に送って、首相を女性から選び、閣僚の半分以上を女性に委ねることはできるだろう。それだけでその国の政治は、優しくなり、外交路線も穏やかになるはずだ。

当面の障害は、外国ではなく国内の男社会かもしれない。これまで権力をほしいままにしてきた権力の亡者の男どもは必死に抵抗するだろう。けれども、もはや彼らにまかせておくことはできない。極東の国際緊張をここまで悪化させた責任を取り、反省してできるだけ遠慮していただかねばなるまい。

笑わば笑え。しかしつぃ先日の自民党総裁選挙では、首相になったら閣僚の半分を女性にすると表明して立候補した女性議員がいた。すばらしい。あと一歩だ。

グローバルに見渡してみてもアマゾネス政治は日本で最も早く実現するようにみえる。日本の女性はいまこそ立ち上がっていただきたい。

日本のためだけというそんな小さなことではない。いまや世界中の、人類の命運がかかっていると思う。

この本を表紙の肖像画を描いてわたくしの誕生日を祝ってくれた孫娘に捧げる。

思うことを自由に書いて、描ける未来が続くことを願って。

                  横山三四郎

目次(予定)

はじめに

第一章 日本の女性はトロイの木馬になる

第二章 カイバル峠から危険がいっぱいの中東へ

第三章 「戦争は嫌いです!」と山口淑子(李香蘭)

第四章 

新型極超音速ミサイルの軍縮交渉を提案しよう

落としどころは日本主導のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)

第五章 

イギリスの女傑が明治⒒年発見の世界一の観光地

最上川上流部のエデンの園、アルカディア回廊が動き出す

おわりに 女性の部隊を創るとき

ソフトカバーの紙本 1980円(予価)

アマゾネス政治

                          

第四章 新型ミサイルの軍縮交渉を提案しよう落としどころは日本主導のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)

ワシントンで疑問を探る

中東での駐在を終えて帰国したとき、わたくしの頭n中にはアメリカという国の不可解な政治が、消化不良の疑問符として残っていた。

テヘラン南部で開かれた反王政デモを取材したその足で、アメリカ大使館を訪れたら、広報の女性職員が「担当者が国務省にパーレビ王政はもう終わった、と打電したところです」とまで言い放った。テヘラン南部の広場で1979年12月10日、100万人規模の反パーレビ王政の集会が開かれたときのことだ。

それから間もなく、パーレビ・イラン国王は王妃と共に出国した。するとこんどはアヤトラ・ホメイニ師が亡命先のフランスから帰国して、歴史は大きく回った。

これを目の当たりにしたわたくしは、アメリカという国が分からなければ、中東も分かったことにならないと密かに考えるようになっていた。国際社会でのアメリカの存在はかくも大きい。

しかしいつも正しい判断をするとは限らないのではないか。それまで37年間、統治してきたパーレビ国王をあっさり見限ったのは、アメリカの間違いではなかったのかという思いがどうしてもぬぐいきれない。

あの判断がどれほど大きな混乱をもたらしたかを思い出すと胸が痛くなる。ワシントンのホワイトハウスの大統領の意思決定は、どのようなプロセスで行われているのか。その政策の仕組みをなんとしても知りたいと考えるようになった。

アメリカで学びたい人にはフルブライトという留学制度がある。フルブライト上院議員(1905~1995年)が資材を投げ打って創設してくれた奨学金制度で、ジャーナリストにも少ないけれども枠がある。

中東での駐在の任期が終わったら申し込もうとしていた。ところが事務局を訪ねて申請しようとすると「残念ながら、申し込みができるのかは40歳まで。年齢制限があるのですよ」と言う。いつの間にか、わたくしは41歳を超えていた。

1年遅かったか!

新聞社はもともとこの計画には反対だった。特派員から帰国したばかりなのに、またも海外留学だなどという身勝手を許されるわけがない。外信部の上司も「とんでもない。たわけ」とあきれ顔だ。

それでも何か特例でもないものかと、あちこちに粘り強く頭をさげていたら、なんと駄目を承知で申請書を出していたフルブライト委員会から、条件付きでOKが来たのである。

普通、留学生には家族の滞在費まで含めて支給されるけれども、本人だけで1年間ならいいですよという内容だった。委員会のスポンサーのなかに、留学の目的を評価して費用を出してくれるところがあったのだという。

新聞社の方は前例のない個人の都合による休業ということで留学期間中は無給になった。

それでも、わたくしはうれしかった。幸いにして妻はそのころ小学校の教員に復職して、勤務先の小学校はたまたま自宅の近くて何とかやりくりができそうだった。

毒をもって毒を制する毒ガスの軍縮

ワシントンでは、GW(ジー・ダブリュー)と呼ばれるジョージ・ワシントン大学の中ソ研究所が1年間の席を用意してくれた。所長はガストン。シグール所長である。戦争中から極東アジアを専門にして、とりわけ日本通だという。

「困ることがあったら、なんでも相談してくださいね」といわれ、秘書の女性からわたくしの机と椅子をいただいた。

ほかの研究員は大学の授業と兼務のようで、いつ行ってもほとんどいない。

まずは食事と寝るところが大切だから、留学生が利用するという50人ほどの寄宿舎を定宿に定めた。大学院の担当教授からクラスメートを紹介していただき、大学食堂も案内していただいて暮らしを整えた。

特派員時代のホテル暮らしよりはしみったれているけれども、取材という義務から解き放たれてるんるんの気分である。

早速、興味深いテーマがみつかった。

大手のシンクタンクの研究者がアメリカで毒ガスの生産と備蓄の再開を提案しているというのだ。第一次大戦でドイツが大量に使って多くの死者のみならず、不具者を出した反省から主要国では生産していない古めかしい武器である。

なぜ武器ならなんでもあるアメリカがいまごろ毒ガスのような非人道的なものを生産するのか。これは不可解だ。

さっそく予約を入れて、面会に行った。提案の研究者は40歳前後の男性で、思いがけないことを語った。

「毒ガス兵器はコストが安く生産できることから、一般には知られていないけれども多くの国で備蓄されてもいるのです。これをなんとかして保有を止めさせ、できれば廃棄させたい。そのためにはアメリカも保有して同じ土俵に上がって交渉しなければならないのです」

毒ガスを止めさせるためには、まず毒ガスを保有しなければならない。軍縮交渉では珍しくないことなのだという。この提案には議会の上院、下院の関係議員が賛同して、すでに予算もついて具体化に向けて進んでいると語った。

非人道的、かつ恐るべき無駄使いである。それでも軍縮のような国家同士の交渉事には欠かせない手法であるらしい。不可侵の国家主権を振り回す国が多くなった昨今、なるほどありそうな解決法ではある。毒ガスの軍縮交渉の実務者の話は興味が尽きなかった。

人類への究極の犯罪者たち

ここで毒ガスのエピソードを思い出すのは、2021年も夏になってにわかにニュースが流れるようになった極超音速弾道ミサイルなる最新兵器のせいである。

中国が開発に成功したという極超音速弾道ミサイルは音速の5倍で飛んで、迎撃は不可能だという新型のミサイルだ。射程距離は数百キロの中距離の戦略ミサイルらしい。

中国が発表するや、ロシア、アメリカ、さらには北朝鮮までが実射に成功したことを伝えた。専門家の間ではすでに知られていたミサイルのようだ。

一般の庶民にとっては、ロケットの技術からして縁遠い話題だ。しかしながら、ある日、突然、無数の罪もない人びとの命が奪われるという出来事が、実際に起きるかもしれない。その可能性はゼロではなくなった。

このようなミサイルが核弾頭を搭載して世界中を飛び始めたら、人類はどのようなことになるのか。殺りく兵器を考えること、開発すること、保有することは、全て人類に対する犯罪だと思う。

広島、長崎に原爆を投下したアメリカは、東京湾もターゲットとして研究していたとされる。東京湾というのは、北京語に詳しい故山口淑子さんによれば「トンチンカン」と発音するというが、東京湾に1発ぶち込まれたら笑い話ではすまない。

わたくしたちは日本列島をぐるりと10隻の艦船を連ねて一周した日露などが、そうした攻撃能力を実際に保有していることを知っておかなければなるまい。

日本はさきごろ種子島からH2AロケットでGPS英衛星の打ち上げに成功した。その気になれば確かな技術があるから自前で極超音速弾道ミサイルを開発することもできるだろう。

しかしながら平和国家の日本にはもっと別の使命があると思う。

それは、関係国に働きかけて極超音速ミサイルのこれ以上の開発の停止と核弾頭の搭載の禁の止を話し合う軍縮会議テーブルにつくよう働きかけることである。

極超音速弾道ミサイルについては、先ごろ北朝鮮が打ち上げ実験を行った際、国連安全保障理事会で非難決議を採択しようとしたところ、中国とロシアが反対して見送られた。中露の艦船10隻が日本一周するという前代未聞の威嚇を行う直前のことだ。

しかしこうしたミサイルを常備の軍事力として保有するには莫大な費用がかかる。維持も困難だから、内心、軍縮交渉が始まるのを心待ちにしていないとも限らない。

台湾がらみで極東アジアの国際緊張がいまだかつてなく高まっている現在、日本政府がこうした提案を行う価値は十分にある。

 毒ガスの生産と備蓄について、軍縮会議の奇奇怪怪な慣習を教えてもらってから、このような研究をしているシンクタンクにたいする関心が深まって、ワシントンの各地にある研究所の訪問に拍車がかかった。

主要なシンクタンクに出入りするようになったら、不審に思われたのか、カウンターに座っていると若い男が何事か話しかけてきた。そして日本人の研究者だ知ると、男は「日本を独立させたのは間違いだったと思っている」ととんでもないことをふっかけてきた。相手は素性を言わなかったけれども、それとなく監視されていることを感じ取った。

しかしそんなことでワシントンの仕組みの調査を止めるわけにはいかない。記者の資格はないからホワイトハウスの記者クラブに出入りすることはできないが、シンクタンク訪問はますます面白くなっていった。

著名な研究機関でも、目的を明確にしてインタビューを申し込むと、時間を取って丁重に応対してくれる。アメリカは自由な民主主義の国であることを実感する日々だ。

少しずつだがアメリカの大統領の意思決定の背景が見えてくるように思われた。

新スターウオーズ禁止条約(SDI)を提案しよう

そのなかで注目したのは、SDI(防衛構想)である。

一般の人にも分かるように「スター・ウオーズ計画」と呼ばれたSDIは、レーガン大統領が1983年に発表したもので、おささか古いように受け取られるかもしれないが、軍縮交渉の観点から考えるとさっぱり古くない。

それどころか、新しく緊急課題になってきた極超音速弾道ミサイルの軍縮交渉を進めるには、最もふさわしいモデルではないか。

 音速の5倍で飛んで、迎撃不可能だという極超音速弾道弾ミサイルは、素人には途方もない軍事機密のかたまりのように思われる。このような受け止め方がら軍縮交渉に乗り出す前に尻込みしてしまうのは間違いらしい。

 ワシントンの研究機関では、名称は難しいけれども軍事専門家の間では誰もが知っていることだと思われる。中国が8月に発射実験の成功を発表するや、米ソ、さらには北朝鮮までが同じタイプのミサイル発射の実験とその成功を発表したことは、なんら不思議ではない。

 レーガン米大統領が1983年23日に発表した「スター・ウオーズ計画」は、第二次大戦以降の米ソの軍拡競争に終止符を打つことになる転機になる重要な政策転換だったが、そこにはなんら秘密はなかあったという。

 その原型である「戦略防衛構想(SDI)」を提案して、実際にアメリカの施策にすることに成功したシンクタンク、ヘリテージ財団のフェルナー会長はこう語っていた。

 「SDIの必要性について、提唱者のグラハム将軍ら5人と話し合ったのはイギリスでのある会議の席上で、レーガン大統領がカーター全大統領を破って当選する前の1080年だった。

 このときグラハム将軍が、膨大な戦力を必要とせず、しかも敵の核ミサイルを確実に迎撃できる新しい戦略防衛システムについての仮設を打ち出し、ヘリテージ財団はその実現可能性の調査、研究で全面的に協力することになった。

そこで12~15人ほどのグループがヘリテージ財団を舞台に新戦略防衛システムの可能性を探り、これはさらに軍事技術、宇宙科学、経済などの専門家による特別チームによる研究に発展していった。」

当時、財団の研究員でメンバーの1人として研究に加わったジェフ・バロー氏(軍事問題研究家)によると

 「SDI構想は様々な専門的な見地から、すなわち技術的、政治的、経済的なあらゆる側面から点検された。

 この段階では、研究の事実が一般に公表されることはなかったけれども、研究そのものにはなんら秘密めいたものはなかった。後にグラハム将軍が成果をまとめて『ハイ・フロンディア』と題した本を出版したことがその証明です。」

という。

 ニューヨークタイムズ紙によれば、これら当初のグループには水爆研究に参加したエドワード・テラー博士や実業家ジョゼフ・クアーズ氏らも入っていた。クアーズ氏はヘリテージ財団の創設資金の提供者である。

 防衛産業も民間に開放して、小さな政府による徹底したコスト削減を目指すSDI構想は、結果的にアメリカ政府の財政基盤を強靭にした。

 その結果、米ソの冷戦時代はアメリカに有利に働いて、ゴルバチョフ・ソ連書記長との間で戦略核兵力の50%削減、中距離核戦力の全廃(1987年12月)までを引き出すことができた。

それだけでなく緊張緩和の機運が進んで、ソ連邦内部に民主化の機運が高まり、ついにはソ連邦の解体、エリツイン大統領下での共産主義の終焉にまで至るのである。

 アメリカにはそれぞれの専門分野に特化した中小のシンクタンクから、総合商社のような大手の研究所まで、わたくしがワシントンで過ごしたころで全米に7500もあるといわれた。これらが政策研究用のヒモのつかない寄付金でまかなわれている。

 だからホワイトハウスの大統領は、毎日のように寄せられるこれらのシンクタンクからの提案を、自らの政治路線に沿った政策を見つくろっていれば間に合うといっても過言ではない。しかしいい加減な政策を採用したら、たあちまちしっぺ返しが来る。

レーガン大統領の前のカーター大統領は、テヘランの大使館からの報告を鵜呑みにしてパーレビ国王を出国させた結果、米大使館を職員53人とともに占拠されて解決できなくなった。アメリカ国民にはこれが不満で、次の統領解決できず、大統領選挙でレーガン大統領に負けてしまった。わたくしとしては歴史は取り戻せないにしても、かなり溜飲は下がったのだった。

極超音速弾道ミサイルの軍縮交渉は日本のTPPとセットで進めよう

 ワシントンに渦巻く金、名声、権力をめぐる抗争のエネルギーはすさまじい。ホワイトハウスには上下両院からの注文、メディアからの突き上げが日々、殺到している。政策立案の下準備の段階で活動するシンクタンクの情報は目立たないけれども、それもおろそかにはできない。

 これらをこなすアメリカの大統領は相当にタフでないと持たないようだ。

 バイデン大統領はベテランだから、ソフトに中露をあしらってエネルギーの消耗に気を使っているようだが高齢だ。しかもアフガニスタンからの米軍の撤退問題もあり、インド太平洋から極東にまで広がった国際緊張の連続は次第にこたえてくるだろう。会議での居眠りなど危険信号はもう出ているようだ。

そこでアマゾネス政治はもう少し先のようだから、岸田首相に目下の最大の懸案である極超音速弾道ミサイルの軍縮交渉のお膳立てを提案したい。バイデン米大統領を側面からサポートするためである。

日本政府がデリケートな軍縮交渉に直接、関与することは中露から逆ねじを食って逆効果になりかねない。

しかし近年、世界中から最高のシンクタンクと評判の「日本国債問題研究所(公益財団法人)」が育っている。

日本国際問題研究所は国連の核実験禁止条約の事務局をしているから、不自然ではない。それに研究所は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を取りまとめた実績がある。

TPPは、太平洋に面した国々の唯一の貿易協定として11カ国の決済に活用されて、NATOを脱退したイギリスまでが参加している。

このように大きな軍縮交渉のプロジェクトは、日本にとっては荷が重いことは承知の上だ。日本がシンクタンクを前面に出して動き出せば、アメリカのバイデン政権はすぐに主役の座に出てくるだろう。

大事なのは軍縮交渉に参加して成功したら日本主導のTPPメンバーになって、太平洋地域での平和な経済活動ができるという展望だ。これがセットになっていれば中露ともども先行きに明るい展望を期待して交渉のテーブルについてくれるように思われてならない。

このような大それた提案をするのは、日本国債問題研究所(公益財団法人)に、初代の故友田錫所長から研究員として参加するように誘われたことがあるかららである。そのときは私自身が都内の女子短大から国際関係論の教授職にとたのまれて新聞社を退社したばかりだったのでお断りせざるを得なかった。それでもアメリカンタイプの見事なシンクタンクを立ち上げたのを見守ってきた。

もう一つ、期待したいのは「中曽根康弘世界平和研究所」(公益財団法人)である。これもアメリカタイプの新区たアンクなので、相互に協力して新型弾道ミサイルの削減交渉の開始を世界中に広報したいものだ。こうした情報戦は極めて重要である。

ほとんど半世紀前のアメリカのスター・ウオーズ計画」は、米ソの核兵器を半減させたのを皮切りに、ソ連邦の分解、さらにはロシアの共産主義の放棄まで歴史を動かしたことを思い出す。

日本のロケット技術をもってすれば極超音速弾道ミサイルなどお茶の子さいさいだ。保有国に包囲され始めた今、研究を急ぐのは当たり前だろう。

しかしそれよりも極超音速弾道ミサイルのような非人道的な殺りく兵器の削減交渉を、関係国に呼びかける旗振りは日本にふさわしい。

中国などは一気に実戦配備に動いている気配がある。単なる反対は意味をなさない。毒をもって毒を制する毒ガ理論も駆使しながら、粘り強く、断固たる決意で、国際社会に呼び掛けたいものだ。

これこそ被爆国日本の責務だろう。そうすればアメリカの「戦略防衛構想(SDI)」のような思がけない歴史的な変動が、必ずやきっと始まるに違いない。

おわりに 女性の部隊を創るとき

 かわいい孫娘の将来を思って書きだした本だが、その途中で中国とロシアの軍艦10隻が日本列島を一周するデモンストレーションをLiveで追いかける場面があった。

あ然、ぼう然の出来事である。

中国とロシアのミサイル駆逐艦など10隻は、日本海で合同軍事演習を行った後、仲良くお手手をつないで10月18日、津軽海峡を通過したのみか、日本列島に沿って太平洋岸を南下、同23日に鹿児島県の大隅海峡を通って東シナ海に抜けた。

中露の合同軍は、搭載の武装ヘリコプターを離着陸させてミサイルの実射訓練を行ったりした。このために日本の戦闘機が現場に飛んで警告を行った。あからさまな軍事的な威嚇はいまだかつてなかったことである。

 これについて中国軍のスポークスマンは「津軽、大隅海峡には公海があり、領海を侵してはいない」と語るとともに、「これはアメリカとカナダの艦船が台湾海峡を航行したことに対する対抗措置である。日本は中国の内政問題である台湾問題にはかかわらないでほしい」と述べた。

中国は日本一周の合同軍事演習の模様を全国民に向けテレビ放映した。日本の戦闘機が警告のために接近したことについても、「我々の演習を邪魔しないように警告を発した」と追い払ったかのようなコメントである。

これはすでに中国が国民の世論操作にまで踏み込んでいることを意味するのかどうか。彼らの意図を過小評価することはできない。

日本は日米安全保障条約を結んでいるから、その気になればいちゃもんはいくらでもつけることができるだろう。ここは慎重のうえにも慎重に構えて、中露につけ入る隙を与えてはなるまい。

この本は、いまから30000年以上も前、紀元前12~10世紀ごろに存在したと考えられる強く、賢い女性だけの軍団のコンセプトを、紀元21世紀の現代に活かすせないものかと書きだした。

そしたら、前代未聞の中露の艦艇10隻による日本一周だ。

その意図については、日本政府は間違えることなく分析して迅速に対応しなければならないが、アマゾネス政治は一つの選択肢かもしれない。日本はどこまでも武力行使に反対して、平和を貫くことを態度で示すために衆議院で女性首相を選出して、女性閣僚の多いアマゾネス内閣の国になるのである。

日本では女性議員の立候補者が約18%しかなく、当選者も多くはないが、このような緊急事態においては非常の手段があっていいし、できるのではないか。

そしてアマゾネス内閣のもとで極東アジアの緊張緩和の道を探り、事態の改善を待つのである。

日本がモデルになって、優しい政治と平和な経済活動を掲げるアマゾネススタイルの内閣が世界各国に広がるには、まだまだステップが必要なようだが、これくらいの決意が必要なほど危険な時代にさしかかってきた。

宗教にしても主義にしても、一旦、組織ができてしまうと、個々人の意思とは別に組織として動いてしまうことが。あるようだ。しかも最高位の人は、大抵は最も年取った人だから、組織も最も古い教義を掲げるようになって、それまでの改善の努力が忘れられ、ともすれば組織内の不協和音の首謀者にされてはじき出される。そして集団そのものは最も古くて柔軟性のない先鋭的な教義のまま突っ走って、対外的な衝突を引き起こすようになる。

 こういう相手は、もはや善意では御しきれない。ついには力と力がぶつかり合う軍事衝突、戦争に至る。

 事態はその寸前まで悪化している恐れがある。

 自民党は総選挙の公約に防衛費の大幅増を掲げた。この事態に当たり前なことだ。タッグを組む公明党もこれまの

枠にはこだわらない考えを表明した。

ただし予算編成には気を配ったほうがいいだろう。あまり突出すると鵜の目鷹の目の中露から口実にされかねない。予算化にあたっても補正予算に小出しに回すなど注意深さが求められよう。

 

 アマゾネス政治は女性の天性のやさしさ、柔らかさが身上だ。しかしながら、それでは通用しない相手に対しては

力でも負けない兵力が求められる。コロナ禍で配転させられたり、実質的に解雇されたりした女性が35万人もいるという報道があった。

これらの女性の有志で、女性だけの部隊を編成することは一石二鳥ではないだろうか。その予算は暫定的に厚生労働省の失対事業費から捻出して、後に正常化を図るくらいの配慮をする。女性だけの軍隊にはそれぞれの国で取り組んでいるが、よく知られているのはイギリス軍だ。指導員として彼女たちを招くコストは外務省の分担だろう。

 関係のないところに振られて不愉快に思われた方々には平にお許しいただきたい。この未曾有の危機に、なんとか波風を立てず平穏のうちに関係国を軍縮交渉🈮のテーブルに座らせたい一念からの不作法です。

第四章で詳述した「毒をもって毒を制する毒ガス理論」が受け入れられて、極超音速弾道ミサイルの軍縮交渉が軌道に乗り、インド太平洋の国際緊張が少しずつでも緩和に向かいますよう、皆さまのご理解とご協力を切にお願いもうしあげます。                 横山三四郎